小林保子, 吉田美和子
東京福祉大学大学院紀要 1(2) 173-180 2010年11月1日
本研究では、米国における重度重複障害児とその家族が地域において高い生活の質(QOL)を維持し、豊かな生活を実現するため、その基盤となる個別の教育支援計画をどのように作成し、実践しているのか、地域支援の実態も含め、一事例を対象に視察調査を行なった。本事例においては、個別の教育支援計画は保護者を中心とした教育、医療、福祉からの多様な支援者で構成されたチームによって作成され、家庭を教育の基盤とした実践が地域の専門的支援を活用し、適切な連携に基に行われていた。こうした実践を可能としている要素として、関係者間の共通理解の基盤となる Vision Statementの存在と、これに基づくコミュニケーションの育成と密接な連携の構築があげられた。本事例は、在宅の重度重複障害児の教育を含めた地域支援を、多様な地域資源を効果的に協働させながら実現していく実践例として示唆を与えるものと思われる。