「ローカルとグローバルを行き来する力を鍛える」
1992年に世界遺産リストに載ったアンコール遺跡は、国際的な協力支援という大義のもとで、各国・機関による修復や調査が進められている。世界的観光地となったアンコールには大勢の外国人観光客も訪れる。それを後押しする観光産業の伸展は目覚ましいものがある。しかし、1970年代から80年代末にかけての内戦を経て、カンボジアの国家復興の旗印として掲げられ続けてきたアンコール遺跡は、「世界の遺産」である意義と価値が強調され続けてきたのではないか。グローバルな文化遺産の側面が先走りし、アンコール遺跡と近接して暮らす地域の人々の思いや価値観は取りこぼされてきたのではないか。発掘調査を通じて、地域にとってのアンコール遺跡やその歴史が、彼らの地域史(郷土史)としての材料を提供できればと考える。文化遺産としての遺跡の保存と地域における真の活用にとって、身近に暮らす人々との相互理解が何よりも重要と考える。それを実現するための研究・教育活動として、発掘調査・人材養成・文化遺産教育及び普及活動・地域史構築のための聞き取り調査などに取り組んでいる。
(研究テーマ)
考古学と地域、市民社会
東南アジアにおける文化遺産の継承と考古遺跡(カンボジア、アンコール遺跡を事例として)
古代東南アジアにおける瓦の技術交流史