炭谷 晃平, 柏田 祥策, 尾崎 夏栄, 山田 正人, 毛利 紫乃, 安増 茂樹, 井内 一郎, 小野 芳朗
廃棄物学会論文誌. 15(6) 472-479 2004年11月
現在, 廃棄物埋立処分場浸出水および処理水による周辺水環境汚染が指摘されている。われわれは, これまでヒメダカの成魚または孵化稚魚を用いた処分場浸出水の水環境汚染影響評価について検討し, 報告を重ねてきた。その一方で, 魚類の受精胚に与える浸出水の影響については十分な検討をしておらず, また魚類受精胚に対する化学物質および環境試料の影響研究に関する報告例も比較的少ない。そこで本研究では, ヒメダカ受精胚に与える廃棄物埋立処分場処理水が及ぼす影響を評価することを目的として, 1) 受精胚に対する孵化阻害試験および2) 孵化酵素発現に与える影響試験を行った。その結果, 孵化率は処理水の割合に対して濃度依存的に低下した。また奇形発生も確認されたが, これは濃度依存的ではなかった。奇形発生は, 試験水の特定浸透圧範囲すなわち試験水の浸透圧が, ヒメダカを含む硬骨魚の血液浸透圧 (300mOsm/L) 付近である250mOsm/Lから300mOsm/Lとなったときに頻発するという現象が確認された。本研究の結果, 処理水には, ヒメダカ受精胚に対して孵化阻害および奇形発生という生態影響を引き起こすリスクが存在することが確認された。