萬代雅希, 笹瀬巌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 82(2) 236-250 1999年2月1日 査読有り
本論文では, まずマルチキャストパケットを扱うために制御パケットに複数の目的アドレスを含むようにSURP方式を修正し, マルチキャストパケット混在トラヒックにおける修正SURP方式の特性を理論解析する. 解析及び計算機シミュレーションにより, 修正SURP方式はマルチキャストパケット混在トラヒックにおいて, 低中負荷状態において良好な特性が得られることを示す. また高負荷状態においては, 制御パケットどうしの衝突の増加に加えて, マルチキャストトラヒックのように目的アドレスの競合が起こりやすい状況では, 特性が著しく劣化することを示す. つぎに, 修正SURP方式の高負荷状態における特性を向上させるために, 修正SURP方式に新たに二つの操作を付加し, 制御チャネルの一部を優先ミニスロットとして用いるSURP方式を提案する. 第1の操作として, 他の制御パケットと衝突しなかったにもかかわらず, 目的アドレスの競合によりチャネル予約の獲得できなかったユーザに対し, 他のユーザからの制御パケットが転送されない優先ミニスロットを割り当てる. この操作を付加することで, 一度制御パケットが衝突しなかったユーザは確実に予約を獲得できる. 第2の操作として, 優先ミニスロットを設けることによる制御チャネルでの競合を低減させるために, 優先ミニスロットに割り当てられたユーザの目的アドレスと重複するアドレスをもつユーザの制御パケットの転送を, 優先ミニスロットに割り当てられたユーザのアドレスと重複しなくなるまで延期させる. マルチキャストパケット混在トラヒックにおける, 修正SURP方式のスループット及び遅延特性については, 理論解析及び計算機シミュレーションを用いて, また提案SURP方式については計算機シミュレーションにより特性評価を行った結果, 提案SURP方式は, 高負荷状態における特性劣化を低減させることができ, マルチキャスト混在トラヒックに対して有効な方式であることを示す.