土田 亮
上智大学法学会 『上智法学論集』 56(4) >157-195 2013年3月
平成13年の商法改正において自己株式取得が原則自由化され、さらに現行会社法においては、いわゆる償還株式、義務償還株式について、会社による自己株式の取得と償却と整理された。一方で、違法な自己株式取得については、財源規制違反の場面において立案担当者から異論が示されたものの、取得を無効、あるいは譲渡人が善意・無重過失でない限り無効とする立場が、現在でも通説である。しかし、自己株式取得自由化前から続くこれらの見解は、(1)株式の強制取得の場面を想定していないこと、(2)違法に取得された自己株式が処分された場合をそうていしていないこと、といった難点がある。強制取得を含む広範な自己株式取得事由が認められ、かつ取得した自己株式を会社が再処分しうる現行の仕組みにおける自己株式取得の「無効」がもたらす効果を再検討したうえで、違法な自己株式取得の効果をどのように解すべきかについて解釈論および立法論を展開した。