髙山 惠理子

1980 年以降の日本における医療政策が医療ソーシャルワーカー（ＳＷ）特に退院支援に及ぼした影響について考察することを目的とした。本稿では、医療ソーシャルワークと関わる医療の施策を概観するとともに、診療報酬等に関する文書におけるSW、社会福祉士に関する言及から、施策においてSWが何を期待されてきたかを検討する。さらに、保健医療分野におけるＳＷについて、ＳＷ数の推移、病院・診療所におけるＳＷの所属部門の変化、「退院支援」業務がソーシャルワーク業務全体に占める割合に関する諸調査から明らかにした。その結果、ＳＷ数の増大、地域連携関連部門に所属するＳＷ数及び「退院支援」業務の割合の増大が明らかになった。これらの結果より、医療政策がソーシャルワーク実践に及ぼしたと結論付けた。

保健医療分野で取り組まれており、臨床における思考プロセスの可視化を可能とする臨床推論のソーシャルワークの分野における応用可能性について検討したシンポジウムのシンポジストの発言を文書化したもの

本研究の目的は、医療ソーシャルワーカー(MSW)の組織コミットメントの特質を把握したうえで、組織コミットメントと離職意図との関連を分析することである。病院のMSWへの質問紙調査(無作為抽出)を実施した(有効N=608名、回答率:36.7%)。確証的因子分析の結果、組織コミットメントは愛着的、継続的、規範的要素の3因子となることが確認できた。相関分析の結果、下位尺度ごとに相関があることがわかった。これらを確認後、離職意図を従属変数とする共分散構造分析を行った。その結果、組織コミットメントは離職意図と有意な負の関連があり、組織コミットメントが高いと離職意図が低い傾向であることが確認できた。これまで把握されてこなかったMSWの組織コミットメントを3因子モデルで把握し、離職意図との関連を示した点で本研究の意義がある。ほかの関連要因を含めた組織コミットメントと離職意図の関連モデルの検討やほかの領域のソーシャルワーカーや福祉従事者を対象とした組織コミットメントと離職意図との関連の分析が課題である。(著者抄録)

「退院計画」は病院のソーシャルワーカーにとって最も重要な業務のひとつとなっている。しかし,この業務の定着に関する実証的検証はなされていない。本論文の目的は,特定の医療機関における19年にわたるソーシャルワーク原簿の分析から,特定機能病院における「退院計画」の定着を実証的に検証することである。援助業務の定着という場合,数量的な定着と共に,援助システム上の定着がある。本論文では,「受療援助」と比較して「退院計画」を取り上げ,数量的な定着の指標としてケース数の増大を,また,援助システム上の定着の指標として「病棟紹介率」を設定し,それらと定着に影響を与えた要因との関連性を検討した。影響を与える要因としては,病院の機能分化を促す「医療政策」と,「枠組みチーム」の形成をとりあげた。結論として,「医療政策」は「退院計画」の数量的な定着の点で貢献したが,一方で,「枠組みチーム」は援助システム上の定着に関して効果的であった。本論文では,病院の機能分化を促す医療政策の中で,「退院計画」を担うソーシャルワーカーの重要性が認識されたが,その際,効率的で,かつ,患者に不利益を与えない院内業務のシステム化が重要であることを考察した。

In social work studies, various concepts of team have been suggested. One of the most important aspects of team is that team members participate in assessment of patients and decide more adequate care planning for patients. However, in Japanese hospitals, it is normally doctors who assess patients' needs and prescribe treatments to be done by other professionals. This paper suggests the concept "team as a framework", in which all professional members belonging to independent sections, participate in assessment process and have chance to exchange free opinions. "Team as framework" is important in two ways. One, team members are encouraged to discuss all the patients concerned. Two, team members are expected to change their roles according to the needs of patients. The analysis of a large hospital of a high specialization status seems to suggest that the "weekly going round" of all patients' beds and "weekly conference" in wards and sections contribute to form the concept "team as framework", where two points are identified as important factors. One, "weekly round" and "weekly conference" clarify the patients as a team's concern, giving chances of discussing their overall conditions as a group. Two, they divide the members and non-members of a team, which work team as a "small group".