髙山惠理子
社会福祉学 41(1) 99-109 2000年7月10日 査読有り
「退院計画」は病院のソーシャルワーカーにとって最も重要な業務のひとつとなっている。しかし,この業務の定着に関する実証的検証はなされていない。本論文の目的は,特定の医療機関における19年にわたるソーシャルワーク原簿の分析から,特定機能病院における「退院計画」の定着を実証的に検証することである。援助業務の定着という場合,数量的な定着と共に,援助システム上の定着がある。本論文では,「受療援助」と比較して「退院計画」を取り上げ,数量的な定着の指標としてケース数の増大を,また,援助システム上の定着の指標として「病棟紹介率」を設定し,それらと定着に影響を与えた要因との関連性を検討した。影響を与える要因としては,病院の機能分化を促す「医療政策」と,「枠組みチーム」の形成をとりあげた。結論として,「医療政策」は「退院計画」の数量的な定着の点で貢献したが,一方で,「枠組みチーム」は援助システム上の定着に関して効果的であった。本論文では,病院の機能分化を促す医療政策の中で,「退院計画」を担うソーシャルワーカーの重要性が認識されたが,その際,効率的で,かつ,患者に不利益を与えない院内業務のシステム化が重要であることを考察した。