平野 哲文, 浜垣 秀樹
日本物理學會誌 59(12) 862-870 2004年12月5日
クォークとグルーオンを基本構成要素とする新物質「クォークグルーオンプラズマ(QGP)」の探索が,米国立ブルックヘブン研究所にある世界最高エネルギーの重イオン衝突型加速器(RHIC)で進められている.RHICでの実験で測定される様々な物理量の中で,「ジェットの抑制現象」はQGP探索の強力なツールの一つとして注目を集めている.本記事では,ジェットのエネルギー損失機構についての平易な説明を与え,実験結果と流体模型をベースとした理論との比較を行い,そこから引き出される物理量,衝突初期状態の性質について議論する.