米澤昌子
『同志社大学留学生別科紀要』 5(5号) 49-60 2005年12月 査読有り
日本語学習者の発話時において会話文の重要な要素としてあげられる終助詞の誤用がしばしば見られる。意味の誤用以外に,終助詞の使用がほとんど見られない発話例や,逆に使用過多となっている発話例など,使用頻度にも不自然さがあると思われる。また,女性学習者による「今日,一緒に行くか?」など性差別の使用を無視した終助詞の使用も見られる。そこで,本稿では,このような学習者の終助詞の誤用を招く原因を探るために,まず,主だった日本語テキストにおける終助詞の扱いについての調査を行った。さらに適切な終助詞の使用を考える上で,自然な日本語の会話文において,どのような終助詞がどのくらい使われているのかを見るため,シナリオ4作品,4038文を分析資料とし,各終助詞の使用頻度及び終助詞使用における性差傾向の数値的な把握を試みた。その結果,会話時において終助詞は約3発話に一回用いられていることが分かった。また,終助詞全てが平均的に用いられるのではなく,その使用にはかなり偏りが見られた。それは性別による使用状況でも同様であり,男性が好んで使用するもの,女性が好んで使用するものがあることが数値で確認できた。