西田 志穗, 江本 リナ, 筒井 真優美, 飯村 直子, 草柳 浩子
日本看護科学会誌, 27(1) 34-43, Mar, 2007
研究目的:本研究は,小児看護における卓越した技を探求し,看護師のエキスパートネスをモデル化することを目的に行った.研究方法:Flickのエピソードインタビューの方法を参考に行った.小児看護領域で5年以上の臨床看護師経験をもち,修士修了または修士在学中の計12名に対し,研究の趣旨を説明し,同意を得たうえで面接を行った.データ収集期間は,2003年6〜10月であった.結果および考察:参加者の語った15例を分析した結果,5つのモデルと一連の看護実践の流れおよびその要素を抽出した.5つのモデルは,(1)子どもとのつながりが見えにくい家族に対し,子どもの力を引き出すことができる糸口を見つけて示すモデル,(2)残された時間が少ない家族にとって大事なことを見つけ出し,周りを巻き込みながらケアするモデル,(3)いつもと様子の違う子どもや家族にとって今大事なことをタイミング良く見つけ,その場の判断で道筋をつけて後押しするモデル,(4)子どもが満足できない状況が繰り返され,通常のケアが適用できない時に,周囲と共有しやり方を変えるモデル,(5)子どもや家族の気持ちと状況とのズレを確認し,モデルを示しながら関わり,ケアを共有していくモデル,であった.各モデルを構成する一連の看護実践には,(1)気になる,(2)臨床判断,(3)ケア,(4)方向性の確認,(5)システムへの働きかけ,(6)効果とその確認の6つの要素があった.このプロセスで看護師は,気になった場面を解釈し,子どもと家族の示す行動の意味を見出して状況を捉え直し,ケアの方向性を決定していた.そして看護師は,子どもの満足や子どもと家族が納得する状態を具体的なゴールに定め,それらが子どもと家族にとって最善の利益となるようにケアを展開していた.さらに,直接的なケアやその場の関わりだけでは解決が困難な場合には,システムに働きかけてケアを展開し,効果を出していた.本研究のモデルは,判断やケア,関わりを,「どのように」行ったのかを看護師が見極めながら実践を進めていくことができるものである.(著者抄録)