山形 寛, 石川 ふみよ
日本リハビリテーション看護学会誌, 12(1) 81-88, Dec, 2022 Peer-reviewedLead author
目的:就労を希望する高次脳機能障害をもつ人が発症後から現在に至るまでに自己像をどのようにとらえたかを明らかにする.方法:高次脳機能障害の自立訓練事業施設に就労を希望し通所している者10人に,半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.結果:高次脳機能障害をもつ人がとらえた自己像として,【ひとりではなにもできない】【頭の働きも前より落ち,もとどおりにはならない】【生活や気持ちが上向きになった】【自立できる(自分にはその可能性がある)】の4つが見いだされた.高次脳機能障害をもつ人は,自身を思いどおりに動けない体になったととらえ,その後,身体機能の回復を認識することで,認知機能の変化とそれによりもとどおりの生活ができなくなったととらえるようになり,周囲の援助や役割変更を受け入れることで自立ができる可能性についてイメージを認識していた.考察:高次脳機能障害をもつ人は病識の欠如や記憶障害があることで,直面している問題の現実感を得にくいため,周囲の認識とギャップを生み,行動の修正ができないことにつながる可能性もある.就労に向けては,当事者が自己をどのようにとらえているのか自らの言葉で語る場面をつくり,周囲からフィードバックを受ける機会をもつことが必要である.(著者抄録)