野口潔, 他
日本語教育国際研究大会 2024年8月1日 全米日本語教育学会, カナダ日本語教育振興会
本ワークショップでは、リレー作文という協働学習の新形態を体験してもらう。体験後に振り返り・話し合いの場をもうけ、リレー作文への理解を深めてもらい、今後クラスで実践を試みる動機付けとなることを期待したい。また、より効果的実践方法を構築するための意見交換の場としたい。
リレー作文は、話し合いなどを交えながら複数人が内容を書きつなぎ、1つの物語などを完成させる活動である。外国語学習における相互行為の有効性が言語習得理論(Long 1983他)と教授法(Canale & Swain 1980他)の両面から主張され、日本語教育でも協働学習が盛んに行われてきているが、解決すべき課題も多い。その課題の一つが学習者の関与度の差である(Fernández Dobao 2012他)。この点、リレー作文では学習者が等しく文章を書く機会が与えられ、自分の書いた部分については意見や説明がしやすい。そのため、学習者の関与度の差はかなり軽減できる。また、学習者単独での文章作成とは異なり、リレー作文では面前の読み手を意識した文章作成、そして、書き手の意図をくみ取った上での文章作成が求められるため、学習者の学びは多岐にわたる(野口 2023他)。
本ワークショップでは、この学習者の学びを是非とも体感してもらいたい。本ワークショップの構成は以下の通りである。まず、話題提供人らが実践方法・実践例を紹介し(1~4)、そののち、参加者が実際にリレー作文を体験(5)、そして、話題提供人を交えての振り返り・話し合いを行う(6、7)。これによって、冒頭に示した目的(①リレー作文への理解を深め、実践する動機付けを高める、②効果的実践方法構築のための意見交換の場とする)を達成したい。
1. リレー作文の概要説明・・・5分
2. ゼロ初級での実践例紹介:ゼロ初級でもできる、入念な準備と実践・・・10分
3. 初級後半での実践例紹介:時系列と起承転結構成を使った創作活動・・・10分
4. 中級での実践例紹介:ショート・ショートの結末を書く活動からオリジナル創作へ・・・10分
5. グループ活動:希望する参加者に上2~4いずれかの活動を体験してもらう・・・25分
6. グループミーティング:各グループで活動の振り返り・・・15分
7. 全体ミーティング:体験で生じた疑問・問題点・気づき・学びなどの共有・議論・まとめ・・・15分