濵野 寛子
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE 28(2) 101-114 2017年3月31日
従来,主要な助数詞の意味や用法については大部分が分析・記述されてきたが,助数詞の意味的制約の一般化を重視するあまり,個別事例における助数詞の使い分けについては考察が十分でなく,助数詞の使用の実態を表しきれていない。本稿では,ケーススタディとして「電話」を数える助数詞「台」,「本」及び「件」の使い分けについて分析を行った。分析のアプローチとして,「電話」の名詞としての多義的性質に注目し,名詞「電話」が,話者の主体的な事物の捉え方の反映として多義的に様々な意味的側面を有し,それらが助数詞の使用に影響を与えていると考えた。そして,認知言語学の理論的枠組みから,メトニミーの議論を用いて「電話」の有する多義的側面における各助数詞の使用の動機付けを分析し,焦点化される「電話」の意味的側面に応じて,各助数詞の使用が異なる動機付けにもとづいていることを示した。