奈須 正裕
教育心理学年報 41 170-178 2002年
教育とはつくる営みであり, 研究とは知る営みである。現場人は日々, 教育をつくりながら, 子どもの学習や発達について知見を広げている。一方, 心理学の科学志向性がもたらす方法論上の制約から, 多くの教育心理学研究者は, 教育をつくる現場の営みに参画することなく, 時にはことさらに現場人を遠ざけることさえしながら, 研究活動を行ってきた。しかし, 研究者もまた, 現場人と同じ, つくりながら知るという研究スタイルを採ることができる。本論では, 4つの異なるアプローチ (実験教室, 認知カウンセリング, 教室実験, コンサルテーション) を取り上げ, それらを整理分類しながら, つくりながら知るという実践的な研究スタイルの可能性及び長所について検討を加えた。最後に, 実際のエピソードを基に, コンサルテーションが単に実践的な知識をもたらすのみならず, 理論的な洞察を深める点においても有用であることが示された。