フェアブラザー・リサ, 相川弘子
接触場面における言語使用と言語態度 人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書, 第278集. 接触場面の言語管理研究 11 117-129 2014年2月28日
千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第278集 『接触場面における言語使用と言語態度』接触場面の言語管理研究 vol.11 村岡 英裕 編"LANGUAGE USE AND LANGUAGE ATTITUDE IN CONTACT SITUATIONS : LANGUAGE MANAGEMENT IN CONTACT SITUATIONS VOL.11", Chiba University Graduate School of Humanities and Social Sciences Research Project Reports No.278Although the stage of evaluation is the central component of language management theory, determining whether a deviation will become a problem or not and hence whether an adjustment should be made or not, it has been given relatively little attention by researchers. This paper, therefore, presents an overview of the evaluation stage of language management based on the findings of past research, focusing on processual features, the type of deviations that are evaluated, the effect of the speaker's perception of their interlocutor on the evaluation process, the norms that govern whether or how a deviation will be evaluated and individual differences between evaluators. Finally, it will be suggested that different people may evaluate the same type of deviation differently because of their different levels of contact situation proficiency.評価段階は,留意された逸脱が問題となるのかならないのか,それによって,調整が行われるのか行われないのかを決定する重要な役割を持つという点において,言語管理プロセス (Jernudd & Neustupný 1987)の中核をなすと考えられるが,これまでの研究では,この評価段階にあまり焦点を当てていなかった.評価段階の研究の重要性については,逸脱の評価によって 接触場面全体の印象が変わるため,接触場面に快適に参加できるかどうかの鍵となることが考 えられる.Gass & Varonis (1991),熊井(1992)などが指摘するように,否定的に評価された逸脱は,第二言語話者の言語能力よりも,第二言語話者の性格に関連付けられる傾向があり,例えば,留意された逸脱が,失礼,意地が悪い,攻撃的,常識がないと受け止められることがある.また,「評価における価値観の違いは,社会的相互行為におけるトラブルの原因」になるとも論じられている(宇佐美 2012).つまり,逸脱の評価が,人間関係の発展と接触場面への適応に大きな影響を与えるため,さらに研究を積み重ねる必要がある.したがって,本研究では,特に,評価に関わるプロセス,評価される逸脱の種類,相手をどのように認識したのかが評価に与え る影響,留意された逸脱が評価されるのかどうか,またはどのように評価されるのかを決定づける規範,また評価者の個人差に焦点を当て,言語管理における評価段階の全体像を提示する ことを目的とする.そして,最後に接触場面能力の差により,同じような種類の逸脱にも関わらず,人によって評価が異なる場合が生じることを論じる.