新開治郎, 田村恭久, 伊藤潔, 熊谷敏, 杵嶋修三
情報処理学会研究報告. ソフトウェア工学研究会報告 96(32) 17-24 1996年3月22日
本稿では, 複数種類の担当者が情報を共有して作業をすすめる協調作業ドメインを分析し, そのドメインモデルを提案する. このドメインを記述する視点は, 扱う情報の項目, 情報を参照・更新する作業フロー, 作業フローの担当者の3種類ある. これらの各々の視点を詳細記述し, また視点間の関係を明確化するためのダイアグラムや記法を検討した. この結果, 作業者間の関係はERD(Entity Relationship Diagram), 作業毎の作業フローはSFC(Sequential Function Chart), 情報項目と作業フローの関係は表など, 記述する視点や関係に応じたチャートや記法を明らかにした. また, これらの記述を効率的に行うための順序を提案した. 例題として, 医者, 看護婦, 薬剤師, 会計事務などがカルテ情報を共有する, 病院の診察業務ドメインを取り上げた. 記述する視点に応じたダイアグラムや記法を採用することで, 効率的なドメインモデル記述が可能となった. また, 協調作業という抽象的なドメインに固有で, かつこれに属する複数のより具体的なドメインに共通する記述順序, すなわち, プロセスモデルを抽出することができた.