吉田 和博, 寺本 渉, 浅井 暢子, 日高 聡太, 坂本 修一, 行場 次朗, 鈴木 陽一
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 109(345) 91-96 2009年12月10日
本研究では,理系の学生を対象として,臨場感のイメージに関する調査を行った.また,教育的背景と臨場感のイメージとの関係を明らかにするため,文系の学生を対象とした調査の結果[1]との比較を行った.その結果,「臨場感」は「あたかもその場に臨んでいるような感じ」という辞書的定義で用いられるだけでなく,興奮・緊張感・緊迫感など強い情動反応を喚起する非日常的体験であれば,現実場面に対しても用いられる傾向にあることがわかった.また,「臨場感」は,視覚,聴覚,前庭感覚,身体運動感覚などの遠感覚及び自己受容感覚と密接に結びついていることが示された.この2つの結果は,理系学生と文系学生の間で一致していた.さらに,「臨場感」の印象をSD法を用いて測定したところ,4つの評価次元(評価性,力量・活動性,刺激構造,非日常性)が抽出され,多次元構造を持っていることがわかった.しかし,それらは文系学生を対象とした調査で得られた結果(評価性,迫力,活動性,機械性)とは必ずしも一致しておらず,教育的背景の違いにより臨場感に対する印象が異なっていることがうかがえた.