梅田 孝太
「ニーチェにおける科学主義と反科学主義の再検討――ショーペンハウアーとの対比のなかで」(日本学術振興会基盤研究(C)課題番号17K02183)第二回研究会個人研究発表 2018年8月27日
ニーチェ研究の内外で大きな論争空間を形成しているニーチェの「自然主義」的解釈は, 科学主義的解釈とも呼ばれる. だが, 科学主義的ニーチェ解釈が, ニーチェ哲学のモチーフを, 先行研究が指摘してきたように人間の本質の解明ないし自然化や, そうして発見された自然に照らしての価値の再評価に限定するものであるとき, 解釈上の多様な問題点を抱えることになると考えられる. 本発表はこの問題点のうち, ①ヤスパースやハイデガー, サルトル, カミュらが取り組んできたような実存思想としてのニーチェ解釈との整合性, および②科学主義的ニーチェ解釈が接続できない初期ニーチェの形而上学的思惟について検討を加え, 初期の実存思想および形而上学的思惟こそがニーチェの科学主義的言説の源泉の一つとして考えられることを指摘した.