髙橋 直治
教育メディア研究 27(2) 43-79 2021年3月 査読有り筆頭著者最終著者責任著者
これまで日本の映像メディア教育の実践研究領域において,戦前から戦中,戦後を通した初等教育の実践を歴史的に辿る試みはいくつもなされてきた。しかし,大学教育における映像メディア教育の実践を歴史的に辿る試みは,管見の限り極めて少ない。また,実践研究領域における研究対象の行為として,視聴受容行為だけでなく映像制作・映像表現行為を中核に据えた教育実践の歴史的な研究は,管見の限り存在しない。映像制作・映像表現行為を中核に据えた教育実践の歴史的な研究を,これまでの日本の映像メディア教育の実践研究領域では,なぜ対象としてこなかったのか。本稿は,戦後の視聴覚教育,放送教育,メディア教育,メディア・リテラシー教育という研究領域において,戦前期の日本の大学における映像制作・映像表現の教育実践に触れている希少な研究を,再考し繋ぎ合わせることで,映像メディア教育を系譜学的な1本の視座によって眺望する。それは同時に,日本の映像メディア教育における新たな実践史パースペクティブ構築の可能性を探るものである。