研究者業績
基本情報
- 所属
- 上智大学 文学部史学科 教授 (ソフィア・アーカイブズ館長)
- 学位
- 修士(史学)(上智大学)
- 連絡先
- k-hojo
sophia.ac.jp - 研究者番号
- 90439331
- J-GLOBAL ID
- 200901096173750000
- researchmap会員ID
- 5000105678
【研究テーマ】
日本列島に暮らしてきた人々は、自然環境といかなる関係を持ち、そのなかでどのような心性を育み、言説を紡ぎ出してきたのか。地球規模の環境問題が深刻化する昨今、これらの問題を追究することは、歴史学に課せられた責務ともいえる。安易な共生論やエコ・ナショナリズム的言説を排しつつ、自然と融和/対立してきた列島文化のありようを客観的に跡づけ、人間とはいかなる存在なのかを歴史的に問題化してゆきたい。
【追究してきたテーマ】
日本古代仏教・神祇信仰と開発の関係に関する研究
東アジアにおける自然環境に対する融和的/対抗的心性・言説の成立と、日本文化における咀嚼・定着に関する研究
東アジア的歴史叙述の起源と特徴に関する研究
『法苑珠林』の注釈的研究
神社の起源に関する研究
パブリック・ヒストリーを用いた社会の再統合に関する研究(築地解体問題、明治神宮外苑再開発問題)
前近代クィア史にかかる方法論、および実証的研究
近代毛皮獣養殖の成立と展開、それにともなう自然観・動物観の変容に関する研究
論文
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日本文学 70(5) 2-14 2021年5月 招待有り責任著者仏教がいかに性別二元構造を強化し多様な性を排除してきたかを古代インドから辿りつつ、同時にそのうちに胚胎した多様な性を救済しようとする言説を捉え、現代の過去を扱う研究が、アウティングにならにず多様な性の歴史を叙述できる可能性を模索した。
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日本文学 65(5) 13-27 2016年5月 招待有り中国の西南地域において、焼畑を行いつつ移動生活を営むヤオ族には、その生業と山中の移動を歴代の王権が許可したことを示す、『評皇券牒』なる文書が伝承されている。そこには、ヤオ族の出自を示す始祖神話も書かれているが、彼らは移動生活のなかで、必要に応じてその神話、あるいは自民族の歴史自体を書き換えてゆく。彼らの活動を文書史料によりできる限り明らかにしつつ、人間における歴史の意味を問う。
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アジア民族文化研究 (14) 165-179 2015年3月31日 招待有り2014年度秋季シンポジウム「病と祓—病気治療をめぐる東アジアの比較文化史—」において、趣旨説明・コメントを文章化したもの。中国古代から少数民族文化、日本の民族文化に至る各報告者の報告内容を、時系列的・空間的に接続することを目指した。
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皇學館大学研究開発推進センター紀要 (1) 22-33,57-70 2015年3月25日 招待有り筆者の担当分は、「中国における神仏習合—六朝期江南における原型の成立と展開—」。中国六朝の江南地方において、政治・社会・経済的な混乱状態のなか、非業の死者を救済しようとする中国宗教の伝統的課題、死者の現実世界へのコンタクト、不老不死への希求などが交錯し、神身離脱・護法善神の神仏習合形式を構築してゆくことを述べた。
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人と自然(安藤百福記念自然体験活動指導者養成センター紀要) (4) 125-133 2014年7月1日 招待有り『日本書紀』以降に度々現れる、動物を串刺しにする描写は、中世以降の仏教による思想的誘導を通じ、アプリオリに残酷なものだと認識されているが、もともとは動物に宿る精霊を他界へ送り返す祭儀の作法であり、動物に対する最も丁重な扱い方だった。人間が「自然」と信じる自らの感性が、実は歴史的・社会的に構築されたものであることを、上記の事例を手がかりに考えた。
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龍谷教学(龍谷教学会議研究紀要) (49) 194-208 2014年3月31日 招待有り東日本大震災を受け、災害の現場、災害後の現場で宗教者はいかなる役割を果たすべきか、浄土真宗本願寺派の教学研究の場で問題提起。筆者は「語ることと当事者性—災害における言説の暴力性と宗教者の役割—」と題する報告を行い、被災した人々の心を周囲の言説がいかに傷つけてゆくか、宗教者がそれに対しいかに自覚的になり対抗しうるかを考えた。
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人民の歴史学 (199) 1-16 2014年3月 招待有り後漢から六朝の時代にかけて、中国江南地方で成立・展開した〈都邑水没〉譚が、他の洪水多発地域や少数民族文化圏、そして朝鮮半島や日本列島に伝播してゆく過程を跡づけ、当初重点が置かれていた危険感受性・避難瞬発力の醸成から、物語的面白さや、地域の人々が抱く自然環境への心性を反映するメディアとして拡大/形式化してゆく様子を考察した。
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上智大学キリスト教文化研究所紀要 (32) 21-42 2014年3月 招待有り共生的と評価されることの多い日本列島の文化においても、当然のごとく、その衣食住の維持のために多くの動植物が殺戮されてきた。列島では、そうした動植物の喪葬をどのように行い、またそれを支える心性は、古代から現代に至るまでどのように変遷してきたのか。見逃されることの多い歴史事象を渉猟し、ステレオタイプの日本的生命観を再考する。
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現代思想(臨時増刊号:特集 出雲) 41(16) 240-248 2013年12月 招待有り中世出雲の宗教的拠点となる鰐淵寺には、同山が天竺霊鷲山から海中へ漂った欠片を引き寄せたものとする、国引き神話を改変した中世神話がある。その淵源を中国杭州霊隠寺の飛来峰伝説に探り、両者を繋ぐ存在として忘れられた入宋僧覚阿の業績に注目、出雲における中世神話の想像的飛躍を、環東シナ海の文化的交流のなかへ位置づける。
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日本文学 62(5) 39-54 2013年5月 招待有り中国六朝以降の医書にみえる、〈瘧〉を治療するための呪言に注目し、その複線的な成立過程を跡づけながら、平城京二条大路木簡にみえる同種の呪言が、『千金翼方』によるとする通説を批判する。さらに、このような呪術/医学の混淆した知識が自然環境に由来することを示したうえで、『源氏物語』若紫巻の一場面の読み直しを行う。
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アジア遊学 (159) 93-110 2012年12月現在、歴史学者の〈科学的〉監視のもとに置かれている歴史は、前近代においては、より豊かで多様な相貌をみせていた。例えば、中国から日本に伝わった医書のなかには、過去を根拠として未来を予想し、現状への対処法を提示する〈歴史叙述〉を持つものもあった。漢籍佚書『産経』を題材に、未来を志向する歴史的言説の可能性を探ってゆく。
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神道宗教 (228) 98-125 2012年10月25日 招待有り神仏習合に関するパネリストの各報告にコメントを付けつつ、同宗教現象を僧侶の実践の問題として捉えなおすこと、列島固有という狭小な文脈ではなくアジア的観点から照射しなおすことを提案した。
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神道宗教 (228) 126-134 2012年10月25日 招待有り神仏習合に関するパネリストの各報告にコメントを付けつつ、同宗教現象を僧侶の実践の問題として捉えなおすこと、列島固有という狭小な文脈ではなくアジア的観点から照射しなおすことを提案した。
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日本文学 61(4) 2-12 2012年4月10日東日本大震災後に噴出した、これを「転換点」と位置づける歴史叙述の問題点を分析し、同言説が個々の主体の不安、それを支持する人々の不安を抑制する防衛機制に過ぎないことを述べた。
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アジア民族文化研究 (11) 245-272 2012年3月31日中国雲南省納西族の祭祀〈祭署〉と、その起源神話や関連経典の分析から、中国少数民族が広く共有する洪水神話の意味、その歴史的起源について明らかにした。
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アジア遊学 (143) 60-75 2011年7月人間が自然環境に抱く〈負債〉の感覚とその歴史について、今村仁司や中沢新一の学説・概念を批判的に検討しつつ、アジア各地に伝わる神話や祭儀を通じて具体的に描き出した。
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アジア民族文化研究 (10) 155-168 2011年3月諏訪大社における御柱祭をアイヌのイヲマンテ等と比較し、その〈送り祭儀〉としてのアジア的性格を明らかにするとともに、薙鎌など特徴的な祭具・神事の起源についても論じた。
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歴史評論 (728) 4-18 2010年12月日本史における環境史研究が、環境倫理や環境哲学と問題意識を共有しえずにいる現状を批判し、歴史学以外で参照すべき先行研究の重要性を指摘した。
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アジア遊学 (136) 173-189 2010年9月中国から日本へ将来された神身離脱の言説は、日本の自然環境を象徴する神祇に適用されたことで様々な変質をきたした。日中の個別の事例がどのような点で相違するかを浮き彫りにし、両者の自然観の特質について論じた。
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上代文学 (104) 14-30 2010年4月中国六朝期に成立し日本へ将来された〈神身離脱〉言説が、儒教や道教との関わりのなかで非業の死者を救済する役割を帯びて形成されたこと、日本では死者の問題は抜け落ちるが救済の方向性は明確に残存することなどを論じた。
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古代文学 (49) 48-61 2010年3月日本古代の人々が水に対して抱く特別な心性を、古墳時代の湧水点祭祀やそれを受け継ぐ歴代宮都の景観と、中国の洞天信仰との関わりのなかから考察した。
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物語研究 (9) 20-31 2009年3月31日古代中国の睡虎地日書「詰」篇を手がかりに、我々は死者を自らの生への回収もしくは排除でなく、死者それ自身として表象することが可能なのかを論じたもの。ミニ・シンポジウム「亡霊とエクリチュール」におけるパネリスト報告の原稿化。
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国立歴史民俗博物館研究報告 148(148) 7-39 2008年12月6世紀から平安期に至る神祇信仰の展開を、律令国家の神祇制度と宗教的心性との関連、仏教との関わりなどから通史的に論じたもの。
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日本文学 53(5) 20-35 2004年5月大殿祭は、忌部(斎部)宿禰の主催する希有な宮廷祭祀である。「大殿祭祝詞」や『古語拾遺』は、同祭が、山中での採材から柱立てに至る一連の伐木・建築祭儀と内的連関にあることを主張する。事実、伊勢神宮の年中行事や遷宮諸祭、大嘗祭にも、これと同種の儀礼体系が共通して存在し、忌部の関与が濃厚に確認できる。これら忌部と樹木との密接な関係は、忌部宿禰の品部である紀伊忌部が同国固有の環境において醸成してきた、樹木に宿る宗教性(木霊・山神の力)を殿舎の守護神へ転化する、木霊鎮めの技法に基づいている。「祝詞」にのみ登場する大殿祭の祭神屋船命は、忌部が樹木との直接的交感を通じて生み出した独自の神格であり、「事問ひし」自然との葛藤を体現する物語りなのである。
MISC
47書籍等出版物
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文学通信 2021年3月 (ISBN: 9784909658470)中国を中心とする東アジア地域において、トラとの接触がいかなる生活文化を醸成してゆくか、古代から近代に及ぶ長いスパンのなかで通史的に叙述したもの。
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森話社 2020年12月24日前者では、本書の目的とその達成のための方法論を概説、パブリック・ヒストリーの課題達成のもとに、臨床歴史学という立場を打ち出した。後者では、現代社会において暗黙の前提とされる国民国家と、それが人間の進歩の到達点であるかのような通俗史観を批判し、その弊害と相対化の必要性を指摘した。
講演・口頭発表等
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みんぱく創設50周年記念特別展「民具のミカタ博覧会─見つけて、みつめて、知恵の素─」関連シンポジウム「Doing TSUNEICHI 『忘れられた日本人』を読み直す」 2025年4月13日 招待有り
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上智大学史学会例会ミニ・シンポジウム「地域の公共性から歴史学を考えなおす─⽴⽯と諏訪におけるパブリック・ヒストリーの試みから─」 2024年11月2日 招待有り
所属学協会
16共同研究・競争的資金等の研究課題
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 2023年4月 - 2026年3月
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文科省 科学研究費 2019年4月 - 2022年3月
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文科省 科学研究費 2017年4月 - 2020年3月
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文科省 科学研究費 2016年4月 - 2019年3月
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文科省 科学研究費 2016年4月 - 2019年3月
社会貢献活動
12その他
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2024年6月上智大学キリスト教文化研究所2024年度連続講演会「伝統宗教と若者の懊悩─宗教は〈いま〉の⽣きづらさにどう応えうるか─」を企画、趣旨を執筆して講演者をコーディネート、シンポジウムの司会も担当した(6/15に開催)。
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2023年8月パブリックヒストリー研究会第15回公開研究会(上智大学史学会・上智大学文学部史学科共催)「過去を生まれ変わらせる可能性─歴史系マンガ作品の製作/読解にみる歴史実践─」を杉浦鈴とともに企画・コーディネート、シンポジウムの司会も担当した(8/26に開催)。
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2023年6月上智大学キリスト教文化研究所2023年度連続講演会「現代社会の分断と宗教/カルト─大学生における〈生存〉の危機と救い─」を企画、趣旨を執筆して講演者をコーディネートした(6/10に開催)。
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2022年6月上智大学キリスト教文化研究所2022年度連続講演会「病と宗教─COVID19の経験からみる差別と救済の境界─」を企画、趣旨を執筆して講演者をコーディネート、シンポジウムの司会も担当した(6/11に開催)。
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2019年7月 - 2019年9月本学学内展示ワーキング・グループ、史資料室と、学生団体「ソフィア・ヒストリー・クラブ」のコラボレーションとして、標記の展示を企画。データの取り方や史資料の読み方、キャプションの作り方、展示の仕方などについて、教授・監修を行った。